MOPACは1981年に始まり継続的な開発が行われてきた半経験的分子軌道計算の代表的なソフトで、このサイトではMOPAC2012を使っています。MOPAC2012にはPM7が搭載されていて、これはPM6に比べて有機化合物における平均誤差が10%削減されており、大規模な有機物や固体の計算におけるエラーが大幅に削減されているそうです。
MOPACの公式ホームページは
こちら
2016年3月にMOPAC2016にアップグレードしました。生体高分子の計算が改善されたそうです。
◎MOPACの使用にあたって気付いたことの覚え書き ◎
index
エネルギー勾配の指定(GNORM) |
有機化合物の高速計算(MOZYME) |
巨大な系の最適化(LBFGS) |
部分的な最適化計算(NOOPT) |
対称性の利用(SYMMETRY) |
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・エネルギー勾配の指定・
エネルギー勾配の最適化終了基準を指定するにはキーワードGNORMを用いる。例えばGNORM=20と指定すると、勾配が20kcal/mol/Angstrom以下になると構造最適化が終了する。デフォルトは1.0。
タンパク質のような大きい系の場合、まずGNORM=10のように大きい値から始めると良い。得られた結果の.arcファイルを編集し、次にGNORM=5でより正確な最適化を行う。そして得られた結果の.arcファイルを編集し、1SCF計算を行い、結果が正しいかどうかを確認する。
小さい系の場合、GNORM=0.01に指定すると十分高精度な結果を得ることができる。
・有機化合物の高速計算・
キーワードMOZYMEを用いることにより大きい有機化合物(酵素など)を高速で計算できる。
注意点:
@ 構造最適化や反応経路の計算など複数のSCF計算を行う場合、通常のSCF計算とは異なるΔHfを出力する。この問題を避けるためにはMOZYME計算の後、得られた構造を出発点として1SCF計算を行い、その結果得れれたΔHfを用いる。
A 電荷を正しく指定する必要がある。系の電荷は自動的にルイス構造で予測されるが、意図したものかどうかを確認しなければならない。そこでCHARGE=nを使って指定する。指定した電荷が予測された電荷と異なる場合エラーメッセージが出力されるので、キーワードCVBを使って結合を追加あるいは削除して電荷が正しく予測されるようにする。CHARGE=nを指定しないとルイス構造で予測される電荷を
用いて計算が進んでしまう。
B メモリ1GbのRAMで10,000原子 2Gbで18,500原子の計算が可能。
C 推薦される構造最適化法は、LBFGSです。
D 閉殻RHF計算だけが許されている。
・巨大な系の最適化・
原子数が500を超える系の最適化にはEFは不向きであり、代わりにキーワードLBFGSを指定する。LBFGS は非常に大きなシステムを最適化することができ、メモリの使用量も少なくできる。
・部分的な最適化計算・
大きな系を最適化する場合、一度に全部を最適化するのではなく部分的な最適化を実行するためにキーワードNOOPTを指定する。例えば水素原子だけを最適化するのであればNOOPT
OPT=Hと指定する。計算の際、すべての最適化フラグをオフにする。計算後、水素原子の最適化フラグはオンになる。
・対称性の利用・
キーワードSYMMETRYを指定する。下記はメタンの入力例。
AM1
EF SYMMETRY PRECISE GNORM=0.05 NOINTER GRAPHF
MMOK
Winmostar
C
0 0
0 0
0 0
0 0
0
H 1.111624 1
0
0
0
0 1
0 0
H
1.155473 0 110.30254 1
0
0 1
2 0
H
1.117307 0 100.3326 0
-118.5536 1
1 2
3
H 1.111624 0
109.47127 0 132.67035
0 1
2 3
2 1 3 4 5
3 2 4 5
4 14
5
最後の三行が対称性の内容を指定するもので、「標準とする原子の番号」「対称関数」「対称となる原子の番号(複数可)」の順に入力する。対称関数は「1」が結合距離、「2」が結合角、「14」が二面角を表す。したがって最初の2
1 3 4
5は二番目の水素原子の結合距離を基準として三番目から五番目の水素原子の結合距離も同様にすることを意味する。
出力ファイルを見ると、この分子はC3vの対称性を持つ分子として計算されたことが示される。
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