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用語集
量子化学計算に関係する用語を調べた覚え書きとして作成したものです。
パウリの排他原理
原子のスペクトルが磁場の中で分裂する現象を説明するためにパウリが唱えた原理で、各原子軌道に何個の電子が入れるかを規定した。つまり「電子の状態は主量子数n、方位量子数ℓ、磁気量子数m、スピン量子数s、スピン磁気量子数msによって定義され、一つの状態には一個の電子しか存在できず二個以上の電子が入ることはない。」とした。
結局、電子は二つのスピン磁気量子数を持つので各原子軌道にはスピンの異なる二つの電子しか入れないことになる。
波動方程式
シュレーディンガー方程式 参照
反結合性軌道
分子軌道は構成原子の原子軌道の重なりにより定義されるが、その中で原子同士の結合に寄与しない軌道のこと。位相の異なる原子軌道が重なるとキャンセルし合って原子核同士の間に電子が存在できなくなり、反結合性軌道となる。
半占軌道
電子が一つだけ入っている分子軌道のこと。SOMO(semi
occupied molecular orbital)という。
フロンティア軌道の一つ。その電子を不対電子という。
ファンデルワールス半径
元素の大きさを表す方法の一つで、原子同士が近づくとき結合しないでいられる距離のこと。
ファンデルワールス力
分子内に電気的な偏りを持たない分子同士の間にも働く弱い引力のこと。
分子は振動しており、そのため分子内での電子の分布に揺らぎが生じ、分子に過渡的な極性が生じる。その静電的な相互作用として働く引力である。分子が大きくなって電子の数が増えるほど大きくなる。
フロンティア軌道
HOMO LUMO SOMO
の三つの軌道を総称してフロンティア軌道という。これらの軌道の間の相互作用が化学反応と密接に関係している。
分極関数
分子を形成する原子の電子軌道は分子内の他の原子の影響で本来の形ではなくなり変形している。この電子の分極の効果を考慮するために軌道角運動量量子数の高い関数を加えている。その関数を分極関数という。例えば酸素原子にd型関数を加えたり、水素原子にp型関数を加えたりする。
例えば6-31G基底に水素原子以外の原子にd型の分極関数を加えたものは6-31G*、水素原子にもp型の分極関数を加えたものは6-31G**と表記する。
分散関数(diffuse関数)
非共有電子対や陰イオンでは核からより離れた領域にも電子分布が広がっており、核からの拘束力が弱く広がった状態を考慮する必要がある。この様な系に対して加える広がりの大きい基底関数を分散関数(diffuse関数)という。ファンデルワールス結合や水素結合など弱くて結合長の長い場合や電子励起状態の計算において重要になる。
例えば6-31G基底に水素原子以外の原子に分散関数を加えたものは6-31+G、
水素原子にも分散関数を加えたものは6-31++Gと表記する。
分子軌道法
分子内にある電子の状態をシュレーディンガー方程式を解くことによって知る方法。計算の際実験から得られたデータを一切用いないab
intio(非経験的)分子軌道法や、計算コストを軽減するために実験値を用いる半経験的分子軌道法などがある。Fireflyは前者に、MOPACは後者に属する。
計算の出発点として分子の構造を入力してやるとアウトプットとして分子軌道や電子のエネルギーを得ることができる。最適化計算を指定すると分子のエネルギーが最小になるもっとも安定した構造を探索して出力してくれる。Winmostarなどを使って得られた分子軌道の形を可視化できてHOMOやLUMOの様子を確認しながら分子の反応性を推測することができる。
また、分子中の各原子に電子がどのように分布しているか、各原子が帯びている電荷の情報、双極子モーメントの方向と大きさなども出力される。
このように分子軌道法を理解し用いることによって化学反応を調べる上で有用な情報を数多く得ることができる。
方位量子数
方位量子数 ℓ は波動関数の幾何学的な形に関係する量子数で、ℓ=0の時のS軌道の形は球対称。ℓ=1のP軌道は軸対称になる。ℓ=2以降はさらに複雑な形になる。
主量子数nとの関係で ℓの値は ℓ=0、1、2、3、・・・n-1という制限がある。例えばn=2であれば ℓは0、1の二つの値しか取れない。
ポーリングの電気陰精度
原子AとBが化学結合して分子A-Bができているとして、その結合エネルギーを電気陰精度を考慮せずに平均的に計算した値と実測値は異なる。電気陰精度の違いによって電子の分布に偏りが生じるためである。ポーリングは二つの値の差を根拠にして電気陰精度を定義した。 (電気陰精度参照)